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 アスピリオに来て3日の夕方。シラと共に湯船に浸かっていた。共同浴場、というところらしい。

「…はぁ~気持ちいいね。」
「ハルアトスにもあるのですか?」
「ないない。こんな風にみんながわいわいお風呂に入るところなんてないよ。面白いね。いいなぁ、こういうの。」

 シラとはハルアトスならどうなのか、アスピリオならどうなのか、そんな話ばかりしてきたように思う。
 ハルアトスがアスピリオから学ぶべきところは多くあった。相互の違いを認め合うこと、できることをしていくこと、それが役に立っているという実感をもたせること、そして、必ず何かと関わり合って生きていることを感じさせること。
 血が違っていても、こんな風に生きていけるのだということ。

「…ねぇ、シラ。」
「はい。」
「あたしね、それぞれの族が力を合わせて生きているということはよくわかったの。」
「はい。」
「…じゃあ、もう一つ突っ込んだこと、訊くね。」
「はい。」

 ずっと考えていた。ここの人たちは、人間と動物の血が混ざり合う人間がいることに対して、何の偏見もない。むしろ、同じ生き物であると考え、手を取り合って生きていくことに対して積極的である。だが、それは皆が人間と動物のハーフである、という部分で同じだからではないかという思いもあった。だからこそ訊きたい。

「たとえば、鳥族と虎族の人たちが…結婚するとか、そういうことはできるの?」
「ええ。」
「え…えぇ!?」
「あ、意外でしたか?」
「…え、だってさ、子供はどうなるの?」
「どちらかの性質を受け継ぎます。母方のものになる場合が多いですね。私も母が鳥族、父は虎族です。」
「そうなの!?」
「同じ族同士だと血縁関係が濃くなりがちです。それに…。」

 シラは少しずつ暗くなっていく空を見上げて続けた。