「……優花さんのこと好きになったのは」
「え?」
「……前に俺が他の女と揉めてほっぺ殴られたときに手当てしてもらった時で。“二股はダメだよ”って言った笑顔にやられちゃったわけなんすけど、」
初めて聞く話だ。
っていうか女子に二股バレて顔殴られるって、ほんとに現実であるのかよ。
なんて思っていれば、「あ、ほんとはその時5股だったんすけどね」とよく分からない弁解をされた。
その情報激しくいらねえ。
優花ちゃんに夢中な最近の三橋くんしか知らなくて忘れてたけど、元は評判の良くない女たらしだったんだってことを思い出してちょっと笑えた。
すっかり丸くなってしまったものだ。
「――けど、あの言葉も嘘だったんだなーって思ったら、俺が好きになった優花さんって偽物じゃん! みたいな!」
「……注意した本人が二股してたんだもんね」
苦笑すれば、彼は深い深い溜息を吐く。

