「……紗奈先輩」
「……」
「腕組んでましたね……」
しかも優花って呼ばれてた。やっぱりあの優花ちゃんであることはほぼ確定だ。
二人が店を出て行ったのを見計らって、三橋くんは呟くように言う。
「……仲のいい兄弟っていう可能性も、」
「お兄さんのこと名字にくん付けで呼んでましたけど」
「……そ、それには複雑な事情があってね……?」
「……なんで紗奈先輩が優花さんのこと庇ってるんすか」
ふっと笑った三橋くんに、あんたが泣きそうにするからよ、とは言えずにきゅっと唇を噛んだ。
……浮気現場? まさか、まさかまさか。
だって優花ちゃんは健太と付き合ってるんだよ?
それなのにあんなことする? 証拠はない。
「とりあえずあたしたちも出よう、ここじゃゆっくり話、できないし!」
「……そうですね」
力なく笑う三橋くんの腕を引いて席を立った。

