「……三橋くん?」
「……先輩がずっと食べさして?」
「こら甘えんな。あたしにはパンケーキがあんの!」
ちぇ、ダメかー、なんて笑いながら渋々あたしの差し出すスプーンを受け取った彼を見て、やっとちょっとだけ安心する。
冗談が言えるってことは、気持ちも少しは落ち着いてきてるってことだ。多分。
すっかり冷めてしまったパンケーキを夢中で頬張りながら、優花ちゃんにバレていないかとこっそり背後の席を振り返った。
パンケーキの味はよくわからないまま。
こちらに背を向けている彼女はやっぱり未だ一人で電話中で、じっと眺めていればふとその向かいの席に男の人が座ったのが見えた。
「……ん?」
思わず眉を顰めながら、パンケーキ最後の一口を咀嚼する。
「……先輩どうかしましたか」
「……あれ」
優花ちゃんの席を目だけで示せば、身を乗り出した三橋くんは分かりやすく眉根を寄せた。

