あれ、下がれない? 後ろに壁なんかあったっけ?
なんて思いながら何気なく振り返れば、そこに唖然とした表情の三橋くんがいたから驚きのあまり悲鳴を上げそうになってしまった。
咄嗟に両手で口を覆って耐えたけど。
「みは……しくん……?」
いつからそこに。
瞬きすることなく目を見張って優花ちゃんの姿を見詰める彼に、あたしの戸惑いは一気に吹っ飛んでいく。
人間というのは不思議なもので、自分よりパニクっている他人を見ると何故か冷静になれるみたいだ。
「……お、おーい、三橋くん!」
ぼーっとしたままの三橋くんの顔の前で何度か手を振ってみたりするけれど、意識がないのかまるで反応がない……!
大丈夫なのこれ!
慌てて彼の腕をつねったり頬を引っ張ったりしてみるけれど、やっぱり微動だにしなかった。
とりあえず物凄いショックを受けているらしいことだけはよく分かった。
分かったけど、このままじゃいけない! 戻ってきて三橋くん!

