翻ったスカートだけが視界に入り、何か言ってやろうとするのに、
「……最悪、キモい」
その後ろ姿が低い声を吐きだしてこっちを振り返ろうともしないから、唖然として何も言えなくなってしまった。
……はあ!?
どう見てもぶつかったのはあっちの方……!
っていうか、うちの高校の制服。あんな非常識な女がいたわけ!?
じっと彼女を見詰めていれば、ここから少し離れた席にこちら側に背を向けて座ったのが確認できた。
……注意しに行くのは後でもできる。
今はおばあさんが心配だもんね。
落ちていた杖を拾って手渡せば、
「ありがとうねえ」
掠れた声にお礼を言われた。
「怪我してないですか?」
「平気よ、ちょっとぶつかっただけだから……、私が大袈裟なだけだわ、ごめんなさいねえ」
おばあさんは申し訳なさそうに言って、杖をついて立ち上がる。
そんなことないのに。おばあさんが気にすることじゃないのに。
とりあえず怪我がなくて本当によかった。

