「なんつーか、……勇気、出なかったんすよ」
「……誘ってないの?」
「紗奈先輩そこは察してくださいよ! 改めて言うことないじゃないすか!」
……三橋くんは、優花ちゃんを誘ってない。
紗奈先輩デリカシーないです! と喚く三橋くんを尻目に、あたしはホッと息をついた。
……なんだ。なんだ。じゃああたしの勘違いじゃん。優花ちゃんは健太のこと裏切ってなんかないじゃん!
健太に言った通り、きっとほんとに家の用事だったのだ。
……あああああ、それをあたしは勝手に勘違いして、何も悪くない優花ちゃんを悪女に仕立て上げて……!
自分はなんて嫌な女なんだ。本当に嫌になる。これだからだめなんじゃないの。
途端に自己嫌悪するけれど、時すでに遅し。
「で、先輩暇っすよね? 今日付き合ってください!」
「……いいけど」
力なく答えれば、三橋くんは「やった」って無邪気に笑った。

