「え?」
気付いた時にはもう遅かった。
「な…んで…」
突然腹に感じる猛烈な痛みに、何が起こったのかわからない。
そっと痛む腹の部分に手を持っていくと、ベとりとした液体が絡みつく。
腹にないはずのでっぱりがあるのも、触ってわかった。
俺……刺されたのか?
ぐでっと力が抜けて身動きがとれない。
そして近かった彼との距離が離れる。
彼はベンチから立ち上がって俺の方を向いた。
その顔は今までに見たことがないくらい満面の笑みだった。
「お前……」
「気付かなかった?
僕、キミたちにいじめられてた佐々木学だよ?
まぁ、気付かないのも無理ないよね?
だって名前も違うし、顔も違うもんね。
わざわざ整形したんだよ?
キミたちに近づきやすくするために。
さっきの話も全部僕のこと。
あの頃からずっとずっとキミたちを殺したくて仕方がなかった!」
「ぐっ……」
興奮気味に笑いながら話す彼を、俺はどうすることもできなかった。
身体が、動かない。
ズキズキと痛みは増していくばかり。
俺、殺されるのか…。
ふと、それでもいいかなと思えた。
彼に殺されるならしかたがない。
それに、死ねば俺は後悔という鎖からやっと楽になれる。
そう思えたからだ。
でも、死ぬ前に一言言いたい。
「お前があの子でよかった。
やっとこれで謝れるな…。
あの時は、ごめんな。
本当にごめん…。
許されないとわかってるけど、ずっと謝りたかったんだ。
ごめん……」
俺は情けながらも、涙を流していた。
俺が謝る頃には、彼も落ち着いていた。
「…今更謝られたって、僕の人生は返ってこないよ。
でも…、謝ってくれて、ありがとう」
「…どうせ殺すなら人思いに殺ってくれ…」
息も絶え絶えに言葉を絞り出す。
痛みと出血で意識が飛びそうだった。
「じゃあお言葉に甘えて。
宮野くん、ありがとう。
…バイバイ」
彼の悲しそうに笑った顔を最後に、俺の意識は飛んだ。


