【友達sid】
「で、その彼女と今付き合ってるわけだ?」
「ご名答ー」
さっきまでこいつの彼女、美咲ちゃんとの出会いを良太の家でビールを飲みながら聞いていた。
「あの後何度か会ってから付き合いだしたんだよ」
「へー、すぐじゃないんだ?」
「まぁね」
「ふーん。
あ、ビールなくなった」
「あぁ、俺のも丁度なくなったし、冷蔵庫から取ってきてやるよ」
「サンキュ。
悪いね」
腰を浮かせて立ち上がった良太がキッチンに行くのを見届けた後、俺の視界にふと机の上に置かれた小さい茶封筒が目に入った。
そっと触れてみようと手を伸ばした時。
「…何やってんだ?」
良太の声がしてビクッとなり、茶封筒に指が少し触れてしまった。
その瞬間バランスが悪く置かれていた封筒は机の上からずれ落ち、バサバサと何かが大量に落ちてきた。
「うわー、ごめん!
って…写真?」
落ちてきてバラバラに散った写真の1枚を取って見てみる。
そこには良太の彼女、美咲ちゃんが笑顔で写っていた。
あれもこれもそれも。
全部美咲ちゃんの写真だった。
「おいおい、お前どんだけ彼女のこと好きなんだよ。
写真あり過ぎ」
俺は笑って急いで拾い集めてる良太に手渡した。
「い、いいだろ、別に」
良太はバッと俺から恥ずかしそうに写真を奪うと、全部集めた写真を元の茶封筒の中に入れて引き出しの中に収めた。
「たくっ、幸せそうでなによりだよ」
俺は良太が持って来てくれた次のビールを開けてグビッと喉に通す。
良太も次のビールを開けて飲みながら
「お前も早くいい人見つかるといいな」
なんて笑って茶化しやがる。
「うるせー」
そんなたわいもない話を2人で楽しく笑いながら遅くまで飲んで眠りに落ちた。
そして朝になり、良太と笑顔で別れて家を後にする。
でも俺は、あの夜気づくべきだったのかもしれない。
彼女が写っていた写真どれもが、彼女と出会う前の日付けで、どの彼女も全部カメラ目線じゃなかった事に……。
END