「かな、なんで投薬治療なんて進藤先生に言ったんだ?
手術、怖いか?」
私のベッド沿いの椅子に座るなり、私に話しかけてくる。
病院ではいつも白衣の幸治さん、今日はジャケットにジーパン。
相変わらずイケメン。
「答えろよ。」
静かに怒ってる。
そうだね、幸治さんには話さなきゃ。
「私、進藤先生から病名を聞いた時、私の人生は、最初からこうなる運命だったのかなって。」
「ん?
よく分からん。」
「きっと、人それぞれの人生における幸せな時間って決まってるんだって。
18年間、私の人生には幸せはほとんど訪れなかった。
それが、幸治さんと出会って、人生が180度変わったんです。
それから幸せ過ぎて、
恵まれ過ぎて、
これ以上の幸せは私にはないんじゃないかって、いつも思っていました。
私の幸せを受ける容量はもう限界になっていて。だから心臓も小さく作られているんじゃないかなって。
人生の長さにあった体なんだって思って。
これ以上の幸せはいらないって思ったんです。」
幸治さんは私の手を探り、強く握りしめて私の目を見た。
「そんなはずはない。お前はもっともっと、これから幸せになるべきなんだ。
俺のそばにはずっとお前がいなきゃ、俺の幸せだってもっとあるはずだ。
お願いだから、そんなことを言うな。
俺の前から消えるなんてことは絶対にない!」
私の手を祈るようにして額に当てて、そっと口づけをする。
こんなはっきり言う幸治さん、初めて見た。
「かなのことだ、他にもあるんだろ?」
「もう…私の体に傷入れて欲しくない。
そんなズタズタな姿、私の本当のお母さんとお父さんが知ったら、 もしかして天国で見ることになったら…」
「そんなこと、言うなって!
大丈夫だ…傷は、気にすることはない。
俺しか見ないんだから。
それに、誰が手術すると思ってる?
親父を舐めるな。世界一の心臓外科医だぞ。」
え…、お父さんが。
え?
「世界一…知らなかった。」
っていうか、幸治さん、俺しか私の体を見ないって、何気にすごいこと言ってる。
私は幸治さんに話してる間、顔が強ばっていたけど、少し頬が緩んだー気がした。
「だから、とにかく手術は受けるぞ!
俺が必ず、親父と一緒にかなを救ってみせる!」



