「でね!私の名前ろくに覚えてないし、結局今日の日直の仕事だって全部私に任せっきりだったんだから!」
あまりの怒りにブルブルと拳を震わせる。
そんな私を見て、目の前の幼馴染みは呆れたように苦笑を溢した。
「まあまあ、そう怒るなって。その人学校一モテるような奴なんだろ?話しかけられるだけでも良いと思えよ」
「ちょっと、蒼空!何その言い方、私に失礼だからね!」
蒼空(そら)は私の同い年の幼馴染みで、家はお隣さん。
私が幼稚園児半ばにこの町に引っ越してきてから、椎名家と水瀬家は家族ぐるみでの付き合いがある。
私は一人っ子だけど、蒼空には歳の離れたお姉さんがいて、よく3人で遊んだなあ…。
2階にある私達の部屋は隣同士のため、わざわざ玄関まで行かなくてもお互いの部屋を行き来することができる。
小さい時から毎日一緒にいたこともあって蒼空には色んなことを打ち明けられた。
高校は別々になってしまったけれど、こうして毎日のように会って話しているから寂しいと感じることはない。
「俺のところ来てからずっとその話じゃん。数学教えて欲しいって言ってきたのはそっちだろ?」
「あ、そうだった!課題で解かなきゃいけない問題がどうしても分からなくて…」
いそいそと持ってきた教科書とノートを手提げ鞄から取り出すと、蒼空が折り畳み式のテーブルを広げてくれる。
「さて…教えてもらおうかな、未来の理系教師の水瀬先生?」
「まだ教師になるって決めた訳じゃないけどな」
「そんなこと言って、大学だってそっち方面で調べてるくせに」
そう、蒼空の夢は教師になること。
ずっと前から言っていた。
自分は父親のような生徒思いで優しくてカッコいい先生になるんだって。
「…どうしようか、正直迷ってる」
ボソッと呟く声に顔を上げた。
視線を感じたのか蒼空は困ったように笑った。
「一葉は?将来どうするか決まった?」
蒼空の言葉に開きかけた口を閉じる。
ふと思い出す。鞄の奥の進路希望調査書。
提出日は明後日なのに未だに空欄のままで放置されているそれ。
「…わ、たしは…」
夢を追うために進学校へと進んだ蒼空。
輪郭のないぼやけたままの夢を抱えたまま流れで普通校に進学した私。
一緒に育った幼馴染み。
でも見ていた景色は違うのかもしれない。
「……一葉」
ポンと頭の上に手を乗せられ撫でられる。
顔を上げるより前にグイッと抱き寄せられた。
「なんて顔してるんだよ」
胸に顔を埋めたまま私は動けない。
そんな私を蒼空は抱き締め優しく頭を撫で続けてくれた。
少しずつ涙が乾いていく。
同時にほんのちょっぴり胸の鼓動が早くなって、なんとなく頬が熱くなった。
「昔さ、言ってくれた言葉覚えてる?…俺もお前のことを信じてる。誰が何と言おうと応援するし、ずっと隣で支えてるからな」
忘れんなよ、と呟く蒼空に折角引っ込んだ涙がじわりと目尻に浮かんで溢れた。
ありがとうと言えなくて代わりにぎゅっと蒼空の服を握り締める。
どんなに時間が経っても、成長しても、蒼空は蒼空だ。
そんな風に思えて私はそっと目を閉じた。
あまりの怒りにブルブルと拳を震わせる。
そんな私を見て、目の前の幼馴染みは呆れたように苦笑を溢した。
「まあまあ、そう怒るなって。その人学校一モテるような奴なんだろ?話しかけられるだけでも良いと思えよ」
「ちょっと、蒼空!何その言い方、私に失礼だからね!」
蒼空(そら)は私の同い年の幼馴染みで、家はお隣さん。
私が幼稚園児半ばにこの町に引っ越してきてから、椎名家と水瀬家は家族ぐるみでの付き合いがある。
私は一人っ子だけど、蒼空には歳の離れたお姉さんがいて、よく3人で遊んだなあ…。
2階にある私達の部屋は隣同士のため、わざわざ玄関まで行かなくてもお互いの部屋を行き来することができる。
小さい時から毎日一緒にいたこともあって蒼空には色んなことを打ち明けられた。
高校は別々になってしまったけれど、こうして毎日のように会って話しているから寂しいと感じることはない。
「俺のところ来てからずっとその話じゃん。数学教えて欲しいって言ってきたのはそっちだろ?」
「あ、そうだった!課題で解かなきゃいけない問題がどうしても分からなくて…」
いそいそと持ってきた教科書とノートを手提げ鞄から取り出すと、蒼空が折り畳み式のテーブルを広げてくれる。
「さて…教えてもらおうかな、未来の理系教師の水瀬先生?」
「まだ教師になるって決めた訳じゃないけどな」
「そんなこと言って、大学だってそっち方面で調べてるくせに」
そう、蒼空の夢は教師になること。
ずっと前から言っていた。
自分は父親のような生徒思いで優しくてカッコいい先生になるんだって。
「…どうしようか、正直迷ってる」
ボソッと呟く声に顔を上げた。
視線を感じたのか蒼空は困ったように笑った。
「一葉は?将来どうするか決まった?」
蒼空の言葉に開きかけた口を閉じる。
ふと思い出す。鞄の奥の進路希望調査書。
提出日は明後日なのに未だに空欄のままで放置されているそれ。
「…わ、たしは…」
夢を追うために進学校へと進んだ蒼空。
輪郭のないぼやけたままの夢を抱えたまま流れで普通校に進学した私。
一緒に育った幼馴染み。
でも見ていた景色は違うのかもしれない。
「……一葉」
ポンと頭の上に手を乗せられ撫でられる。
顔を上げるより前にグイッと抱き寄せられた。
「なんて顔してるんだよ」
胸に顔を埋めたまま私は動けない。
そんな私を蒼空は抱き締め優しく頭を撫で続けてくれた。
少しずつ涙が乾いていく。
同時にほんのちょっぴり胸の鼓動が早くなって、なんとなく頬が熱くなった。
「昔さ、言ってくれた言葉覚えてる?…俺もお前のことを信じてる。誰が何と言おうと応援するし、ずっと隣で支えてるからな」
忘れんなよ、と呟く蒼空に折角引っ込んだ涙がじわりと目尻に浮かんで溢れた。
ありがとうと言えなくて代わりにぎゅっと蒼空の服を握り締める。
どんなに時間が経っても、成長しても、蒼空は蒼空だ。
そんな風に思えて私はそっと目を閉じた。
