両親はいるらしいが、物心ついた頃から楓は俺の家に住んでいる。

楓の両親について知りたい気持ちはあるが、楓自身もよくわからないらしい。

先端が赤くなり、微かな白い煙を出す短い2本の線香の近くに自分の分の線香を差す。

手を合わせたあと、俺は朝食の前に座り3人で静かに食べ始めた。


「朔夜」

「ん?」

「近頃、若い娘が攫われるという事件を知ってるか」

「ああ~、なんとなく」


最近、近辺で若い女(主に女子高校生)が誘拐されるという事件が起きている。

新聞やニュースでもトップを飾るほど有名な事件だ。

だが、こんなに騒がれているにも関わらず、被害は無くならず警察も何も証拠を掴めていないらしい。