「麻衣」
その時。
後ろから呼ばれた、私の名前。
背中をゾワリと。嫌な空気が撫でた様な気がした。
「あ……」
声の主は、どんどん私達に近づいて来るのが足音で分かる。
そして。
私の横で止まった時。
「遅いから探したし。帰ろう?」
雄大が。私に笑みを向けた。
悪い事は何もしてないのに。
罪悪感。
言葉をどう繋ごうか頭で考えていると、先に口を開いたのは鈴木くんで。
「じゃあ、上野。そういう事だから。また明日、な?」
その声に首を縦に振ると、小さくなる背中を見送る。
角を曲がって、鈴木くんが見えなくなると、
「帰ろう?疲れた?麻衣ボーッとしてない?」
「だ、大丈夫。帰ろ、帰ろ」
聞かれていなかったのか。
直ぐに断らなかった私を、雄大がどう思ったのか。
それだけが気になるけれども、私には聞く勇気がなく。
「ただいまー。夕方はもう寒いな」
家に入り、玄関で二人靴を脱ぎながら、いつもと変わらない雄大に、安堵の息を漏らした。

