今日、お母さんに会えて良かった。

じゃないと、また心が迷う。


「少し、聞いてくれますか」


裸女は私の手を包む様に、上から重ねて温もりを与えてくれる。

首をコクンコクンと振りながら、私の手に涙が一粒落ちた。



さっきまで、暗闇のどん底に居たのに。

私を引き上げてくれたのは、間違いなくこの手。



私なんかの為に、泊まりに来てくれたり。
響は毎日の電話。
祐也は、いつも通りにバカやってくれて。
慶太郎は、私に真実を言う場所をくれた。



みんなの気持ちを。私は考えて無さすぎた。

冷静になれば、何が正しいか分かっていた筈なのに。


それでも戸惑うのは……――



「私は、確かに幸せでした」




あの日々が忘れられないから。