『聞こえたか?』

「……煩いくらいに」

『携帯からじゃねえよ。携帯耳から離してみ』


そして僅かに聞こえたエンジン音。


「聞こえ、る。バカみたいな音」

『てめぇ、ふざけんなよ。いくらかかってると思ってやがる。あ、お前電話切るなよ』



まさか。
本当にそうだった、なんて。

携帯の向こうに誰か居るのか、話し声が聞こえる。

まさか、アイツに泣かされるなんて。

一度緩んだ涙腺は、少しつつかれただけで決壊する。


携帯を手に持ったまま、再び近付いてくるバイクの音。


そして――――――




「麻衣?立てるか?」



洞窟内で止まった足音。

現れた赤髪のクラスメートは、いつもの調子で笑った。