「こんなに痩せて。元々細いんだから、ダイエットなんてしなくて良いんだよ?」


優しい声が、心地よく鼓膜を震わせる。


「潤の事で自分を責めているのかい?あれは……運命だったんだよ。どうして菜々があんな事をしたのか、この一週間ずっと考えてたんだ」


そう言って、ベッドの端に腰掛けた。


「潤がこうなる事は、彩乃ちゃんが失敗した時から決まっていたんだよ。俺の推測だけど、聞いてくれるよね?」


私の髪を撫でて、ポツリポツリと話し始める。


「彩乃ちゃんの大切な物は……潤だったんじゃないかな?身体が溶けて、菜々と潤が仲良くなって、潤は菜々が好きになったんだ。菜々の大切な物も潤だったんじゃないのか?だから、失ってしまった」


彩乃……その名前も聞き覚えがある。


「弘志も教えてくれてたんだよ。幽霊は後ろにいる、絶対に逃げられない……どうして気付かなかったんだろうな。あれは、菜々の事じゃなかったんだよ。菜々じゃなくて……潤を指差していたんだ」


何を言われても、何も思い出せない。


目から、涙が零れ落ちるのはどうしてだろう。


いつもより暗い空をぼんやりと眺めて、耳に入って来る言葉を聞いていた。


人形と変わらない。


違うのは、生きているという事だけ。