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 暗い街角に哀愁と軽快が混ざり合うメロディーが聴こえる。

地下世界に響くチャールダーシュは地上のそれと変わらない。

ミロスラフはヴァイオリンの音がする方向へと駆けて行った。

この音は、そうーー間違いない。

「フェオ!見つけた!!」

ヴァイオリンを演奏している男性の周りには人だかり。

「しっし!ほら!もう演奏は終わりです!帰った帰った!」

ミロスラフは見物人を乱暴に追い払うとフェオドールに近寄った。

「フェオ~!今日は公演が休みだからって、こんなところで一人のんきに弾いてて良いわけ!?フィアンセちゃ…いや、もう君の奥さんだっけ?一緒にいてあげなきゃダメじゃん!」

プリプリ怒る親友にフェオドールは弾く手を止める。

「これは俺の趣味だ。……彼女もわかってる」

「趣味、ねぇ。眼鏡に帽子、つけ髭までしてやりたい趣味?」

ここ、ハンガリーの地下世界で演奏活動をするうちにすっかり有名人になってしまった彼。

やって来てまだ五年程しか経っていないが、かなりファンができた。

「だって……バレたら騒ぎになるし…」

「なら、路上パフォーマンスはこれくらいにしてさ、休日くらい家で大人しく過ごしたら?フィアンセちゃん泣いてたよ。フェオがちっとも家事を手伝ってくれないって」