「心、今から出かけるが、付いてくるか?」


 心は、にゃあとひと鳴きすると、蒼の膝から下りた。すると、たちまち人の姿へと変化する。年の頃なら十五。年頃の男の子よりも大きな目に、顔の真ん中に乗っている小さな鼻。赤い唇はなんとも可愛らしい。

 心は蒼と同じように腰まである長い髪をひとつに束ね、青の狩衣をまとっている少年になった。

 しかし、やはりともいうべきか。人間に上手く化けることができておらず、頭には三角形のふたつの耳が生えている。

「どこに行くの?」

 心は興味津々といった様子で訊(たず)ねれば、蒼はうっすらと笑みを浮かべた。

「少し頼まれごとをしていてね、牛車で少々遠出をするんだ」

「行くっ!!」

 蒼が行くところなら、どこへでも。心は嬉しそうに大きく頷いた。