黒猫と居ると、ドキドキして嬉しくなったり、ふわふわ心地よかったり。


でも不安が全くないってわけではない。


前にちらりと電車の中で見た―――あの美少女。


黒猫と同じ制服を着て、人を寄せ付けない節がある黒猫の、間合いに簡単に入れる女の子。


同じ制服を着ているからだろうか、何だか凄くお似合いな気がした。



あの子とはおんなじクラスなんだろうか。


もしかして毎日あんな感じで一緒に帰っているのだろうか。


それを考えるとズキリと胸が痛むんだ。


五歳と言う年齢の壁。


立ち位置も、目線も違う私たち―――


でもあの子はきっと、黒猫と同じ目線で物を見て、同じことを共感できる仲なんだ。





「私、もう少し遅く産まれたかったな。



あんたと同じクラスで机並べたり、教科書見せ合ったりしたかったな」







思わず本音が出てしまい私は慌てて手で口を塞いだ。


黒猫は「なんだよ、そのちっちゃい夢は」なんてバカにするかと思いきや、






「俺はもう少し早く生まれたかった。んで、朝都と同じ研究室に入って…


っても俺は朝都みたいに頭いーわけじゃないから入れないかもしれないけど」





黒猫がちょっと寂しそうに笑う。





「早く大きくなりたいなー。



朝都一人を簡単に連れ去れるぐらいに」







黒猫の可愛すぎる独り言に、私はちょっと笑った。



「今でも充分大きいよ。それ以上おっきくなったら見上げるのが大変。


今のままで、充分だよ」




私が笑うと、黒猫もはにかみながらちょっと笑った。





「やべー



連れ去りちゃいたいかも」





いつか……



いつか私を連れ去ってね。




私を“財津 朝都”にしてね。