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黒猫がおうちに泊まっていってから一ヶ月。


季節は秋。


10月も後半に差し掛かっていた。


「つまりその一ヶ月ほど、あんたらは何もないと…」


相変わらず研究しているのが私一人と言う状態を狙って、


涼子は種無しのイチゴを開発したとかで、私の研究室に差し入れしてくれていた。


もちろん遺伝子を弄ってるワケだけど。


てか涼子、あんたそんなもんばっか作って。もういっそ農学部に移籍したらどうよ。


てかうちの研究室、真面目は私だけか。


とツッコミを入れながらやっぱりおっさん思考の私も、黒猫のことを考えると、まるで乙女だ…


乙女とか言っちゃう自分がイタイけど…


そう。ほっぺにチューされたけど、さりげに手も繋いじゃったケド


この一ヶ月間、特にこれと言ったラブの進展はなし…


だけど


「でも幸せって言うか。何か一緒に居られるだけでドキドキ」


私が胸の前で手を合わせると、


涼子は奇異なものを見る目つきで私をじろじろ。


「あんた大丈夫?とうとうバイオハザード変態ウィルスに体どころか心まで乗っ取られたか」


「何よ。涼子こそどーなの?」


そういえばここ最近涼子の恋バナを聞いてはいない。


どっちかって言うと私よりも涼子の方が恋愛力高めだから、恋をすると聞いてもないのにあれこれ喋ってくるってのに。


「ないない。今のところ気配の“け”の字もないわ」


涼子は面白くなさそうに言ってイチゴを口に放り入れる。


「このイチゴのように甘い恋がしたいわ」


「私はしてるわよ?恋。若干マイペースな黒猫に振り回されてる感はあるケド。


あ、そだ。涼子来週の土曜日って開いてない?」


私は黒猫から貰ったいかにも手作りっぽい印刷がされたチケットを、テーブルに取り出した。


「高校の文化祭?」


「そ。黒猫んとこ文化祭だって。このチケットで二人まで誘えるらしいの。


来て、って言われたし、一緒に行かない?


ってか来て。一人じゃ無理!」


私が真剣に誘うと、涼子は呆れたようにそのチケットを手にとった。