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黒猫は学校に登校する前に一度自分のマンションに帰ると言う。


私も実験していたマウスの様子が気になっていたから、早めに大学の研究室に向かうことに。


駅までの道を二人して歩いた。


私と黒猫の距離は相変わらず50cmぐらい。


さっきのほっぺのチューの余韻から抜け切れていない私は…(私だけね)妙にぎくしゃく。


一定感覚を保ちつつ、その歩調と同じリズムを刻みながら、淡々と進む。


ちくしょう


黒猫め。またもだんまり?


ホント、ネコ…


その飄々とした態度にちょっとムカついて、私は意地悪をしかけた。


「ねぇあんたキスはじめて?」


はじめてだったらからかってやるつもりだった。


「お姉さまが色々教えてやるわ」って。


まぁ私も色々教えるほどテクニックを持ち合わせてるわけじゃないけど~


いつも私の心をかき乱す黒猫のちょっと優位に立ちたくて。


はじめてじゃなくても「おませなガキめ」ってからかってやるつもりだった。


だけど黒猫はにっこり笑って私の質問をスルー。


「朝都のベッドちっちゃくて、背中や腰がいてー」


む。


さりげにスルーしやがって。


これじゃそうなのか、そうじゃないのか分かんないじゃん。


かわし方がうまいって言うのかな…


でも


いつまでも黒猫のペースに巻き込まれてばっかの私じゃないのよ。





「今度ベッド買い換えようかな~。セミダブルぐらいの。




背の高いあんたでも脚を伸ばせるベッドに」