黒猫が大きな目をゆっくりと閉じる。
長い睫が頬に影を落とし……
私はその場で固まったまま。
ど、どうすれば……と一人あたふたしていると、
「早くしてよ」
黒猫が片目だけをうっすらと開けて、私を見てくる。
「わ!は…はい!」
そうよ、朝都!たかがキスぐらいで何今更がたがた言ってんのよ。
未経験じゃあるまいし。
黒猫の顔にそっと顔を近づける。
きめ細やかな肌が目に映り、黒猫の長い睫が私の瞼をかすめて、黒猫の二重瞼がぴくりと震える。
僅かな吐息が顔にかかり、
―――私ははじめてじゃないけど、果たして黒猫はどうなんだろう…
と、この場にきてそう思った。
私がはじめて―――…?
それとも違うのかな…
はじめてだったら、私本当に酷いことしちゃったんだよね。
嗚呼…私、何で昨日のこと覚えてないのよ。とちょっと考えて……
考えて
ん??
と首を捻った。
「ちょっと待った。
私、本当にあんたとキスしたの?いっくら考えても記憶ないんだけど。
つか、いくら疲れてたからってビール二本で泥酔なんてしないし。
寝ぼけてしたんならそれは謝るけど、寝るまではちゃんと記憶あるもん」
唇がかすめる瞬間、私は冷静さを取り戻し黒猫の顔に向かって言い放った。
黒猫がゆっくりと目を開ける。
「ちっ。
あと少しだったのに」
忌々しそうに舌打ちして、顔を背ける黒猫。
黒猫~~~!!
あんた、五歳も年上女の私を騙したんかい!!



