軽くでこピンされて私は思わず額を押さえた。
何がヤバいんだよ。
と言う目で黒猫を見上げると、
「あ~もぉ!」と黒猫が突如声を上げた。
びっくりして黒猫を見上げながらまばたきをすると、
「何かさ。俺は俺なりに考えてるワケですよ」
ぐしゃりと前髪を掻き揚げて、黒猫が言い辛そうにぽつりと呟いた。
「こないだは突然のように会いに行っちゃったし、考えたら俺、朝都のストーカーしてるみたいじゃん?
しかもその後ちゃっかり電車で抱きしめちゃったし…」
と言ったあとになって黒猫はまたも顔を赤くしてふいと視線を逸らす。
「急いでるワケじゃないけど、急過ぎたかなって…
朝都に嫌われたらどうしよう、とか色々考えちゃったわけですよ」
黒猫が薄桃色をした顔を今度はきれいなピンク色に変えてぷいと顔を逸らして、赤くなった顔を隠すように立てた膝の間に顔を埋める。
「…じゃ、じゃぁ、あのあとの授業もそっけなかったのは、急に冷めたんじゃなくて…」
駆け引きとかじゃなく、黒猫は黒猫なりに考えて、距離を測っていたわけだ。
「はぁ?そんなすぐ冷めるかボケ。
ってかずっと冷めねぇし
ネコは体温高いんだぜ?
知らなかった、せんせー?」
またもいたずらっぽく言われて、照れ隠しなのか軽くでこピンしてくる黒猫。
ボケとか…
年上女に向かってさらっと言っちゃう?
何なのよ、クソガキ。
でも、
『ずっと冷めないし』
黒猫の“男”の部分が私の心をくすぐる。
こんな一言で浮かれちゃうなんて私…
私の方がヤバいっつうの。



