ちょっとの間無言でスルメをかじっていた黒猫。
だけどテーブルの上に置いてあった私のケータイに気付くと、
「何これ。ネズミの背中、いれずみ増えてんじゃん。お洒落だな」
と私のケータイストラップ、バイオハザードマウスを手にとってしげしげ。
いれずみとか発想が…
またも可愛いし。
「食べたら死んじゃうよ?ウィルスに侵されてるから」
「何それ。ってか食わねぇし」
黒猫がちょっと笑い声を上げて肩を揺らす。そのふしに私の肩に軽く触れた。
「…ごめん」
ちょっと顔を伏せて、少しだけ横にずれて私から離れる黒猫。
何で…何がごめんなのよ。
離れていかないでよ。
私も黒猫のあとを追うようにして体をずらすと、黒猫の横にぴったりと身を寄せた。
触れるか触れないかぎりぎりのところ。
黒猫がちょっと驚いたように目をぱちぱち。
「何それ。ヤバいっつうの」
黒猫がちょっとだけ顔を覆って上目遣いで天井を眺めている。
下から見上げた黒猫の長いまつげも上を向いていて、男の子のくせに長い下まつげは目の下に影を落としている。
ネコの…長いピアノ線みたいなヒゲみたいに可愛いし。
その目がふいに半目になって私を見下ろした。
「聞いてる?ヤバいっつうの」



