「行くっていっても、たぶん入れ違いになると思うけど」


涼子が私の決意に驚いたように目をぱちぱち。


―――ピンポーン…


インターホンが鳴ったのは涼子が通話を終えてから5分後のことだった。


「お。思ったよりかなり早い。朝都出てきて~」


とぐいと腕を掴まれて無理やり立たされる。


「ぇえ~呼んだの涼子でしょぉ?私は今から黒猫に…」と財布だけを持ちながら、ふらふらした足取りで玄関に向かう。


「浩一の相手は涼子に頼んだから、勝手にやってて」


ピンポーン


もう一度インターホンを鳴らされて、


「もう、しつこい!一回鳴らせば十分だっつぅの!」


苛立っていたのもあってか、私は扉を乱暴に開けた。


浩一が立ってると思ったのに、







部屋の外に立っていたのは黒猫、倭人だった―――


へ?何で黒猫が……


何で浩一じゃないの?




黒猫はさっき見た制服姿でぜぇぜぇ息を切らしながら、肩を揺らしていた。


こめかみにうっすらと汗を掻いている。走ってきたのだろうか。


黒猫は壁に手をつくと、








「朝都サンに、宅急便のお届けに参りました」








と呟いた。


宅急便―――……





「電話の向こうであんな風に会いたいとか言われたら……


誰だって飛んでくるでしょうが」





黒猫は息を整えながら途切れ途切れ言って、私の手をそっと握ってきた。