でも危険な恋だと思っていても、


引き返さなかったのは私。


元々犬か猫どっちが好き?って聞かれたら、犬派だったのに


何でかあの気ままで気まぐれな生き物を好きになったのは私。




キリキリ…


胃が痛むのはろくにものも食べずにビールだけ流し込んだからか。


ううん、これは胸の―――痛み。





あの気ままな猫に振り回されて、かき乱されて―――




でもどうしようもなく


可愛いんだ。




私の倭人。




「…決めた」


私はビールを置いて、キっと顔を上げた。


通話を終えていた涼子は


「決めたって何を?」


と目をぱちぱち。


「今から黒猫に会ってくる!」


「え!今から??」


「うん、行って今日のこと謝ってくる!そんで自分の気持ち伝えてくる!!」


研究室に篭って、ひたすらに動くマウスを見つめて結果が出るのがただ待つのは苦じゃない。


慣れてるっていいぐらいだ、


どっちかって言うと気が長くないとできないことだし。




でも黒猫相手だけには―――


私の自慢の忍耐力が通じない。






会いたい、倭人






そう思うなら、



自分で行くしかないじゃん。