浩一よりも今は
「黒猫に会いたい」
マイペースに電話をしている涼子は私の言葉を
「はいはい」と受け流している。「あ、もしもし?涼子ですぅ」
浩一相手に黄色い声出しちゃって。
「黒猫のバカ!ばか、バカバカ!!
何なのよ、すりすりしながらじゃれてくると思ったら、急に離れていっちゃって!
何だよ!いっちょ前に恋の駆け引きか!
って、その罠にはまってすっかり泥沼にはまっちゃったわよ、私!」
ドン
私はビールの缶をテーブルに叩き付けた。
「はいはい、落ち着いて~」と涼子は宥めながらも、電話の相手に「聞こえた?この荒れ模様。何とかしてよ」と呆れている。
「黒猫のバカ!ばか、バカバカっ!
現役女子高生に可愛がられてるんじゃないわよ。
ってかあの子もあの子よ。
あれは私の黒猫―――
私の彼氏なのよ」
そう喚いて涼子を見ると、
「はいはい、分かったから…ってわけだけど今からこれる?」と聞いてる。
「黒猫……
会いたいよぉ
倭人…」
涼子の手に握られたケータイの先でバイオハザードのマーク入りのマウスがゆらゆら揺れている。
私
もしかしてとんでもなく危険な恋をしちゃったのでは―――