アパートに帰りついて、何も考えたくなくて、私は服を脱ぐとそのままシャワーを浴びた。
熱い湯を身体に浴びせて、このもやもやも流せればいいとか思ったけど、
そんな簡単にいかない。
折りたたみ式のテーブルの上に乗せたマウスの白い背中には製薬会社のロゴと、私が書いたバイオハザードのマーク。
キリキリ……
胃が痛む。いや、胃の痛みじゃなくて―――心臓……
黒猫が同年代の女の子と一緒に居るのを見て
胸が締め付けられる。
私……
おかしくなっちゃったよ。
―――
「で?せっかく家に帰ったって言うのに、あんたは飲んだくれ?」
涼子が呆れたようにビールの缶に口を付ける。
あのあと涼子に電話をしてことの一部始終を説明したら、ありがたいことにビールとスルメなんかのおつまみを持ってアパートに来てくれた。
「飲んだくれじゃないわよ。ヤケ酒」
「一緒の意味だよ。後悔するならなんで黒猫くんに声掛けなかったの」
「掛けられるわけないじゃん」
ビールの缶を握って机の上でうな垂れると、
「あんな可愛い子が隣に居て、研究疲れのおばさんの私が“彼女です”なんて名乗れるわけないじゃん」
「おばさんてね。まだ女子大生じゃない」
「女子大生じゃないもん。私はおっさんだもん!」
アルコールのせいもあってか、私はめちゃくちゃなことを言って喚いて涼子を困らせていた。
ヤケになってスルメをかじっていると、
「おっさんてのは否めないかもね」と呆れながらも私のケータイでマイペースに勝手に電話を掛けてるし。
「私の手じゃ追えないから助っ人を頼むわ」
助っ人……って浩一でも呼ぶのかな。



