一瞬幻かと思って目をこすったけれど、それは消えることも歪むこともなかった。
制服姿の黒猫。
見覚えのあるカーディガンにズボンに学生鞄。
その周りに同じ制服を着た男女が取り囲んでいた。合計三人。
男の子の方は明るく染めた茶色い髪がいかにもイマドキっぽく感じられた。
もう一人……女の子……
遠目でしか見えないけど、
ふわふわの茶色い髪とか、短いスカートとか。そこから覗く白い脚とか。
か、可愛い……
その可愛い女の子が賑やかな可愛らしい声をあげて黒猫の髪をイタズラっぽくちょっと触れて、黒猫は迷惑そうに背を逸らしている。
迷惑そうにはしているけれど、私からはじゃれあってるようにしか見えない。
随分と仲良さそうな雰囲気。
同じ制服。同じ立場―――
急に、自分の研究で疲れ切ったかっこうがみすぼらしく恥ずかしく思えた。
私は結局―――
黒猫に声を掛けることなく、背を向けてひたすらに自分の家の駅に着くことを願っていた。
キリキリ…
胃が
胸が―――痛む。



