「未成年者の飲酒は法律で禁止と定められてます」


変な風にドキドキ煩い心臓を宥めるように、わざとそっけなく言って手を遠ざけると、黒猫は名残惜しそうに唇をぺろりと舐めた。


ネコめ。


可愛いんだか、色っぽいんだか。


しかもさりげに私との距離を詰めてきた。


すぐ隣…ちょっと動いたら肩が触れるぐらい。


移動していこうとはしないし。


自由きままな黒猫のペースにすっかり巻き込まれてる私。


ってか慣れてる??



ちょっとだけ疑いの目でじぃと黒猫を睨むと、


「何だよ」


と言ってそっけなく顔を逸らす黒猫。


黒猫の横顔は一見して整っている。イケメンの部類に入ると思うし。モテそうっちゃモテそう。


長い睫で縁取られた目を伏せがちにして、それでも伏せたままちらりとこちらの様子を怪訝そうに伺う黒猫。


「何?」


またも聞かれて、


「いや…あんたモテそうだな。って思って。元カノ何人ぐらい?」


私は思っていることを正直に聞いてしまった。


黒猫は怪訝そうにしていたのを、今度ははっきりと不機嫌に変えて目を細めると横目で私を見下ろしてきた。


「モテませんよ。俺なんて」


それでもちょっと言い辛そうに鼻の頭を掻きながら、


「……中学のときに一人だけ…」と観念したように答えてくれた。