大学の近くに割りと大きな公園がある。芝生の広場や、遊歩道。小さな池もあって、


犬のお散歩時間帯なのか、飼い犬のわんちゃんを連れている人たちが目立った。


私は飼いネコのお散歩中よ?



連れてるって言うより連れられてるって感じダケド。


さっき構内を歩いたときは赤紫色だった空は、もうほとんど赤い色を失って深い藍色に変わりつつある。


広場の割りと隅の方のベンチに並んで腰掛けて、枝豆の入ったビーカーに手を伸ばす私と黒猫。





「いい時間帯よね」


私がぽつりと聞くと、



「いい時間帯だな」


と、黒猫が目を細めてちらりと私を見て、すぐに呆れたようにちょっと笑った。




「ビールがうまくなる時間帯だよな」


くっくく、と腰を折って堪えきれないという感じで前のめりになりながら、笑い声を上げる黒猫。


「何よ。だって枝豆にはビールでしょ!」


私がビールの缶(500ml、さっきコンビにで買った)を突き出すと、


「おっさんかよ。ってかこのビーカーよりそのビールの方が多いって」


と黒猫は笑っているのか声を震わせている。


「あんたもね~五年もしたらおいしさが分かるわよ」






「明日の勉強の日まで待てなかったのに、五年とか絶対無理だし」





ふっと黒猫の気配(影)が私の顔に掛かり、顔を上げると私の頬をあの黒い髪がかすめていった。


私が両手で握っていたビールを、私の手の上から包むと、


「ちょっとちょーだい」


と身を屈ませて缶に口を付ける。






黒猫なのに、黒猫のくせに





ベンチから伸びた黒い影は―――男の姿を描いていた。