「彼氏とか言っちゃったけどいいの?」
何よ。さっきは嬉しそうにしてたのに。急に不安そうにして。
黒猫が私の一歩後ろを歩きながら、ぽつりと聞いてきた。
「私はいいけど………やっぱあんたはイヤだった?」
急に心配になって振り向くと、一歩下っていた黒猫が一歩前進して私の横に並んだ。
「ううん。すっげぇ嬉しいし」
にこっと白い歯を見せて笑う黒猫。
ドッキン
ありがちなコントだけど、私の口から思わず心臓が飛び出そうになって、慌てて口を押さえた。
そんな私の手の中にビーカーがあるのに気付いたのか、
「ビーカー……の中に枝豆??」
と不思議そうに目を細める。
「あ、うん。一緒に食べようかと思って。涼子が栽培したの。おいしいよ」
「枝豆っておっさんか(笑)」
黒猫が私の頭に軽くチョップする。
全然痛くないけど、さりげに私の頭に触りやがって。
「公園でも行こうぜ。枝豆、食おうよ」
沈んで行く夕陽に、黒猫の無邪気な笑顔が浮かび上がって、私はぎこちなく頷いた。
公園とか……イマドキの高校生でも思い浮かばない発想を、少年みたいなあどけない笑顔で言われたら、
頷くしかないじゃん。
ちくしょう、あんたはどこまで
可愛いんだ。



