「ねぇ、散歩したいって言ったけど行き先決めてるの?」
聞いてみると、
「んーん。適当~」とまた黒猫らしい返事がかえってくる。
ホント、ネコ。
黒猫はちょっと考えるように首を捻り、ポケットに手を入れたままちょっと身をかがませて、またも私を覗き込んできた。
「しっかりリードしてほしいんなら、男モードに切り替えるけど?
朝都サン」
意味深ににやりと笑われて、私は目を開きながら、思わずたじろいだ。
黒猫は―――突然“男”になる。
いや、今までだってきっと“男”の部分はあっただろうけど、それに気付かなかったのは私。
くっそぅ。年上女をいいように弄んで、振り回しやがって。
だけど、黒猫の“男”の表情に一々キュンとなる私……
私の中に眠っていた変態のウィルスはどんどん増殖して、細胞が成長している。
危険過ぎる。
バイオハザード(生物学的危害)レベル1ってとこだけど、そのうち4以上になるかも。
そうなったら涼子に頼んで、私をどこかに閉じ込めてもらわなきゃ。
じゃないと、自分自身どんな行動を取るかわかんないし。
ブツブツ思っていると、
「朝都~、今帰り?誰、その隣の子」
と白衣を着た女の子たちが数人通りかかった。



