「ばぁか。俺は親父に盗られたくないって思ってンの。



この鈍感女。それでもこんな鈍感女を好きになった俺も大概バカかもなぁ。




ちくしょう」





ちくしょう。



はこっちの台詞だよ。




黒猫だと思ってたのに、黒猫のくせに……





いつの間に“男”になってんのよ。





「今度、猫の飼い方を勉強したら?せんせー。冬場はいいぜ?



あったかいから抱いて眠れば?」



黒猫は―――にやりと“男”の顔で色っぽく笑う。


子供だと思ってたのに、いっちょ前に“大人の男”の顔して。



「ば…ばっかじゃないの!」



ちくしょう。


預かってた猫に、この一瞬で、




―――恋をしてしまったじゃないか。





照れ隠しでわざと黒猫の真っ黒の髪を乱暴にまさぐると、黒猫はくすぐったそうに笑って身をよじらせた。



「飼われるのっていいかも。可愛がってね」



にゃ~



猫が鳴いた気がした。



手懐けると、とことん甘えてくるのが猫っていうものだ。





でも



可愛いじゃないか、ちくしょうめ。