それでも飼い猫に「待ってるから」なんて言われたら、どうしようもなく嬉しくて、
私は慌てて白衣を脱いだ。
「もしかしてお前、行くんかよ」
浩一が目を吊り上げて私を睨む。
それをスルーして、白衣をロッカーに押し込めると、
は!しまった…
私、今日に限って何でジーンズにスニーカーなの。しかもグレーのパーカーの下は黒いノースリーブカットソーだし。
色気どころか可愛さも何もないし。
がくり、と項垂れてそれでも気を取り直して涼子の元へ走って行った。
「涼子!グロス貸して。あのピンクの可愛いやつ。それから櫛…櫛貸して!!」
こんな朝の起き抜けみたいなような女、引かれたら困る。
「いいわよ♪黒猫くんに会うのに目一杯お洒落する朝都って面白い…じゃなくて可愛いし♪」
何とでも言って。
今はそれどころじゃないの。
ずっと待ち望んでいた黒猫から、理由は何であれ会いに来てくれたんだから。
少しだけ化粧直しをして、髪をとかすと私は慌てて研究室を飛び出た。
……ところを思い直した。
「そだ!ツナマヨ味のポテチ、まだ残ってる…?」
「あいつにやるポテチなんてねぇよ。俺が全部食ってやったぜ」
と浩一が口をもぐもぐさせながら、へへんと笑った。
……浩一、何で黒猫を毛嫌いする。
「枝豆ならあるけど、持ってく?」
そんなおっさんみたいな……
でも無いよりはいいか。
「それ、ちょうだい」
私は例のごとくビーカー(今度は300ml)にすっかり冷めちゃった枝豆をつめて、今度こそ研究室をあとにした。



