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半ば無理やり溝口さんの車に押し入って、しかも大学まで送ってくれたからさすがにこのままお別れも失礼かと思って私は溝口さんのお手伝い。
マスクドホルムを乗せた台車の片隅を押さえてるだけだけどね。
商品を運んでいると、研究棟の入り口から白衣を着た浩一が姿を現した。
「溝口さん…と、朝都…?」
「おっす」
私は何でもないように手を上げて
「こんにちは~」と溝口さんもいつもの軽い口調。
「こんちは。良かった、待ってたんですよ。午後から実験はじまるし」
溝口さんが居る手前か浩一は愛想よく言って、さりげなく私と手伝いを変わる。
「それじゃ溝口さん、私はここで」
「あ。朝都さんありがとうございました」
二人が研究棟のエレベーターに消えていく。
ひらり
浩一の白衣が僅かに翻った。
その瞬間、あの雨の日と同じ、ほんの僅かな香水とセブンスターの匂い。
何となくその後ろ姿を見送っていると、浩一がちらりとこちらを振り返った。
「俺!」
急に言い出した浩一に私は目を開き、溝口さんは歩みを止めた。
「俺、朝都のそのパーカー好き!」
へ……?
私と目が合うと、浩一は真っ赤な顔を慌てて逸らす。
溝口さんもびっくりして私と浩一を見比べ、ちょっと苦笑。
白衣―――…返さなきゃ…
そう思う反面、
もしかしたら私は、浩一の隣に並んでるのが一番自然なんじゃないか
そんな気がした。



