溝口さんは立ち直りも早く、若干顔を赤らめたまま雑誌をぱらぱら捲る。
「朝都さんどっかいいホテル知らないですか」
「ホテル?リゾートホテル?それともビジネス、シティホテル、カプセル…
じゃなくて?」
気のない様子でいつかの黒猫の台詞を繰り返しながら、私は自分の雑誌をぱらぱら。
溝口さんの話に構ってたら、お昼休みなくなっちゃう。
「いえ、ラブホテルっス」
「う゛ーん、私も最近行ってないから……」
………
ちょっと待て。
「溝口さん、私を女だと思ってないでしょう。そんな話ふつー聞きます?」
「ツッこむとこそこですか」
溝口さんはちょっと笑って
「うちベッド買い換えようかと思って…ほら、前同棲してたときのそのままだから。
その間どっかホテル行こうかと」
「涼子と、ですよね」
確認の為に聞くと、
「他に誰がいるんスか」
溝口さんは不機嫌そうにちょっと眉を吊り上げる。
良く見ると溝口さんの開いていたページはこの辺一帯のラブホテル情報がずらりと並んでた。
なんだ…それが見たかっただけか。
「ここなんていいんじゃないですか?
わっ!部屋に温泉ついてる??
これ本当の温泉ですかね」
「こっちはギリシャ彫刻なんて置いてありますよ。これこそ何のためって感じスよね」
「ほんとにー」
………って、何私普通に話しちゃってンのよ。
「黒猫くんとは行かないんですか?」
急に聞かれて、私は目を開いた。



