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「う゛~頭痛い…」


頭を押さえながら涼子がブツブツ言って隣を歩いている。


「相当飲みすぎたみたいね。ペルシャ砂糖さんと溝口おねーさま、先帰って正解だわ」


ぺったんこの靴のかかとを鳴らして、昨日の失態をまるであざ笑うかのように晴れ渡った青空を見上げた。


朝日が眩しい。


「朝都、へーきそうだね…さっきまで具合悪そうにしてたのに。


黒猫くん効果??」


「まさか。


私だって辛いよ。


だから今日はヒールもやめてぺたんこ靴だし、スカートよりも動きやすさ重視でジーンズ」


タバコすら気持ち悪い状態。


「私、昨日と同じ服だ…うゎ。朝帰りだと思われたらやだな~」


涼子はがくり。


「それにしても眠い…」


私は涼子の嘆きをスルーして大きなあくび。


「頭ぼーっとするし、重い。栄養ドリンク買ってっていい?」


「私も。オレンジジュース飲みたい」と涼子は目をしぱしぱ。


と言うことで、私たちは近くのコンビニに入った。


栄養ドリンクを探そうと雑誌コーナーの後ろを通ると、女子高生たちが雑誌を立ち読みしていた。


見るからに若い女の子が好みそうなきらきらピンクの表紙が目につく。


その棚に『月刊、人体の不思議』と言う雑誌が並べてあった。


「“人体の不思議”出てる!」


私がいそいそとその棚に近づくと


「何よ、そのフザケタ雑誌は」と涼子は呆れ顔。


ま、まぁ??買う人なんて私ぐらいだろうけど。


「“人体の不思議”をバカにしないでよ。この裏表紙にある点数集めるとペン立てサイズの人体模型がもらえるんだから!」


「何だろうね…この変な感じ。顔が妙に輝いてるのに、手にしてるのは“人体の不思議”だし…


あんた病理学なんかじゃなく法医学入るべきだったんじゃない?


生で解剖見放題じゃない」


「私は解剖には興味がないの。ヒトのDNA……細胞や染色体がどうなってるのか、とか抗体や新しいワクチンがどう影響するとかね…」


つらつらと語っていると、隣の女子高生に変な目で見られてしまった。


私と目が合うと慌てて目を逸らす女子高生たち。


その女子高生が持っていた…雑誌の開かれたページを見て私は目を開いた。






ロシアン葵ちゃん―――……