「びっくりしたでしょ?私の方こそごめんね」


夜の道を歩きながら、私の部屋に何故溝口おねーさまと涼子、ペルシャ砂糖さんが居たのかを軽く説明すると


「楽しそうだね」


と黒猫が無邪気に笑う。


私は黒猫の腕を掴んでいた手を離して、手を下ろした。


いつまで掴んでんだか。


黒猫はイヤじゃなさそうだったけど。でも、手を離されて少し寂しそうに私を見下ろしてくる。


まるで瑠璃色のビロードを敷き詰めたような夜空に、ぽっかり浮かんだ月の光だけが淡い光を湛えて


黒猫を幻想的に浮かび上がらせている。


月夜に出歩く黒いネコ。


目を離しちゃうと、すぐどこかへ行ってしまう黒いネコ。


私は一歩黒猫に近づいて隣に並ぶと、そっと黒猫の腕に自分の手を絡ませた。


黒猫は最初少し驚いてたみたいだけど、やがてゆっくりした動作でポケットに手を入れると、再びゆっくりした足取りで歩き出した。


「なんか新鮮だね、腕組むとか」


「たまにはいいでしょ?」


「うん。恋人っぽいよな」


「恋人っぽいじゃなくて、恋人なの」


ちょっと黒猫を睨み挙げると





「恋人―――だな」





黒猫はまたも恥ずかしそうにうっすら笑った。


煌々と輝く月の光が―――


なんだか小さなわだかまりも全部全部吸い込んでいってくれそうで


アスファルトに伸びた私たちの影の距離が少しだけ縮まった。