Chat Noir -バイオハザー度Max-



何て言えばいいのか分からなかった。




『違うって』




その一言が言い出せない私。


何で……



どうして…?




私がまばたきをして黒猫を見上げていると、黒猫はそっと私の上から体を起こした。



「朝都さー」



急に呼びかけられて、びくり!と肩を揺らすと、


「タバコ、吸いたくない?」


またも予想していたことと違う言葉で、私は思わず目をまばたいた。


「えっと……うん…吸ってくる…」



とりあえず、タバコ一本灰にするぐらいの時間のうちに考えをまとめよう。


結局その考えにいたったわけだけど、私がバッグの中からタバコとライターを取り出すと


黒猫はタバコが握られた私の手を上からそっと包み込んだ。






黒猫の―――あったかい体温……






を、ゆっくり感じる前に黒猫は無言で私の手からタバコを取り上げ


そのまま大股でベランダの窓まで歩いていった。


黒猫は窓を開けてベランダに出ると、くるりと私に向き直った。


「へっ??ちょっと…」


慌てて後を追うと、屋根があるとは言え風で降りこんできた雨の景色が黒猫の背後に浮かぶ。


雨粒が黒猫の肩を濡らし、黒い髪を濡らし、肌を滑る。


黒猫はくすんだ雨の中、無表情に私を見据えてきた。


黒い瞳が、じっと私を捉えて離さない。


「や……まと…?」


私の問いかけは黒猫に届いたのだろうか。


聞こえたとしても、黒猫はそれをスルーしたに違いない。









「朝都もさ、隠し事多いよね」









たった一言、降りしきる雨の中


でもやけにはっきりとその言葉が鼓膜を震わせた。