へ―――……?
思わず顔を上げると、すぐ近くで黒猫の真剣な表情があった。
黒猫は唇を引き結び、大きな目をまばたきさせずにじっと私を見据えている。
「…え、えっと…これはね…」
何て言い訳すればいいのか分からず、私が身を起こそうとすると黒猫はそれを阻むように私の肩を抱いてベッドに寝かしつける。
ギシッ
スプリングの音がなって黒猫が僅かに身を起こし、私の上になると私を見下ろしてきた。
「マジで?
こーいちさんの香水なん?」
そう聞かれて、私は目をまばたいた。
「…だって浩一の匂いって…」
「カマかけたの。
メンズものだってことは気付いたけど、俺はこーいちさんの香水まで覚えてない」
カマ……って…
ドキン、ドキンと心臓が早鐘を打つ。
まるで心臓の内側から槍で突き刺されているようだ。
『黒猫くんにはちゃんと言っておいた方がいいよ?
後々トラブルになるから』
涼子の言葉を思い出して、そうしなかったことを後悔。
でも後悔したって―――
もう遅い。
「年下男に飽きて、浮気っスか、おねーさん」
驚くほど低い声で聞かれて、私の肩がびくりと震えた。
黒猫…怒ってる…
「違うんなら違うって言って。
俺、朝都のこと信じるから―――」
抑揚のない声で黒猫は私の頬にそっと手を伸ばすと、声音とは反対に優しく撫で上げた。
その手付きが―――余計に私の不安を煽った。



