サー…
雨の音が遠くで聞こえてきて、その…とめどないリズムを聞きながら、私の手が黒猫の膝と足首の間をいったりきたり。
「マッサージ、うまいね…」
黒猫がぽつりと漏らし、
「スポーツ科学とリハビリテーションの講義は割りと成績がいいの」
と私はちょっと自慢してみた。
「何それ、そんな授業あんの?」
「医療系なら何でもあるわよ?」
しまった…今期“獣医学”ってのを取ってなかったわ。取っておくべきだった。
カリキュラムを作成するとき、こんなペットを飼うとは思ってもなかったから。
「靭帯断裂、って辛かったでしょう?
手術も大変だし、あんたがんばったんだね」
私が黒猫の膝をマッサージしながら黒猫の脚を見つめて、ぽつりと漏らすと、
黒猫は大きな目をゆっくりとまばたいた。
大好きなサッカーを諦めて、術後の痛みにも絶えて…
「がんばってるね」
もう一度言うと、黒猫の手が私の手にそっと重なった。
「特別がんばってるつもりはないけど…
でも、誰かにそう言ってもらえると、なんか救われる。
もしかしたら俺、そう言ってもらいたかったのかも…
諦めてきたことや痛いこと
全部、洗い流して…俺の中から消えていく感じ。
悲しかったこと辛かったこと、
全部受け止めてくれる感じ。
朝都の言葉は―――魔法の言葉」
雨が降っているからだろうか、気温は少し低下ぎみだったけど、黒猫の手はあったかい。
ちょっと照れくさそうに笑って、
「ボール遊び…するって約束したよな?
今度行こうぜ」
またもおひさまのような明るい笑顔を浮かべる黒猫。
外は雨が降ってるって言うのに、
ここだけお日様が照ってて、ぽかぽかしてる。



