「ご、ごめん!大丈夫?」
思わず黒猫の足元に屈みこむと、黒猫は丸めた背を震わせて目尻に涙を浮かべながら
「…いや。大げさに痛がっただけだから…ホントは大丈夫…」と言って足をそろりとベッドに乗せる。
とは言ってるけど…
その慎重な手付きに、黒猫の不調の理由が分かった。
バっ!
私は無言で黒猫のズボンの裾をめくると膝程までめくり上げた。黒猫はちょっと驚いたように目をぱちぱち。
「なにしてンすか?」
黒猫の引き締まった膝には長さ5cm程の傷跡がくっきりと白く浮き出ている。
それは数日間でつけた傷ではなさそうだ。
素人目から見ても分かる、それは手術痕。
以前黒猫は怪我をしたって言った。
それでサッカーできなくなっちゃったんだよね。
位置からすると靭帯かもしれない。
「今日は脚が痛いんでしょ?辛かったんでしょう?
何で言ってくれなかったのよ」
だからさっきも不機嫌だったんだ―――
考えたら今日は雨が降ってる。
雨の日、毎回痛むわけじゃなさそうだけど、今日は気圧の変化が激しかったのかな。
「痛くないし」と黒猫はぷいと顔を背ける。
また強がっちゃってこの子は…
呆れたように微苦笑をして、
「私の前では無理しないでよ」
私もベッドの端に座ると黒猫の膝にそっと手を伸ばした。黒猫が驚いたように脚を引っ込めようとするも
「大人しくしなさい。暴れない」と言って黒猫の脚を引き戻す。
「大人しくしなさい、って俺はガキかよ…」
黒猫がちょっと恥ずかしそうに顔を覆い、
「ガキじゃなくて
彼氏だよ。彼氏の心配して悪いの?
ほら、マッサージしてあげる。ちょっとは楽になるかも」
そう言うと黒猫はまたも恥ずかしそうに俯いて、大人しくなった。



