「そんなに気になるんならこっちから連絡すれば?」


涼子は枝豆をつまみながらのんびり言う。


「…は?私は黒猫のことなんて気にしてないし」


私は涼子の作った枝豆をスルーして、こないだ購入した抗体を使ってマウス実験した血液をPCRに掛けようとして手を伸ばしたけれど、


「誰も黒猫くんのことだって言ってないわよ?♪」


涼子はにんまり。


PCRの装置に伸ばしかけていた手が、思わず止まった。


「黒猫って何すか?先輩、ネコ飼ってんスか?俺も飼ってますよ、ネコ」


後輩くんはラテックスグローブをはめながらわくわく。


「猫は猫でも、それは人間の男の子のかっこした猫なのよ~。ちゃんと喋るし、飼い主にべったりなの」


と涼子が私をからかうように笑う。


「なんスか、それ」


「いいの、気にしないで」


べったりじゃないわよ。四日間も放置だわよ。


ま、私も黒猫を放置してるから人のこと言えないケド。


でも、用もないのにメールとか。普段からあまりメールしないから、こうゆうとき何て打てばいいのかわかんないし。


てか、ウザがられるのが怖いって言うかネ。


気付かなかった…


私、こんなに臆病だっけ?





黒猫に会いたい。


あのふわふわの黒い髪に触れたい。




そう思ってるときだった。



「よ。来てやったぜ~」


ガラッと古めかしい研究室の扉が開いて、黒い影が研究室に落ち、私は思わず入り口の方を見た。