アオイ―――…
私の知らない名前が黒猫の口から出た。
カリンちゃんの名前は聞き慣れてるから今更どうとは思わないけど(嘘です。考えちゃいます)
でも
カリンちゃんを呼ぶときとは違うニュアンスに聞こえた。
すぐにピンときた。
目立つ美人で、お嬢様。
―――それにあの特徴あるバッグは
バイオリンの形をしていたから。
黒猫の―――…
「誰?知り合い?」とロシアン葵ちゃんのお友達が彼女に聞く。
「あー…うん。
元カレ」
すぐに気付いたけど、彼女の口から“元カレ”と聞いたとき何故かズキッと胸が締め付けられた。
元カノが居たことを知ってるし、付き合って別れちゃったいきさつも全部知ってるって言うのに―――
等身大の彼女を目の当たりにすると、それが想像の世界ではなく現実味を帯びて私の目の前に暗い影を落とす。
「…ま、前の彼女…?」
思わず黒猫に確認すると
「あー……うん……」と黒猫はわずかに俯いて低い声で答えた。
また気付いてしまった。
黒猫とロシアン葵ちゃんの言葉のリズムが同じだということを―――
気付きたくなかった。



