甘いはずのストロベリーチョコが乗ったドーナツはちっとも甘くなくて、


私は無理やりコーヒーで流し込んだ。


そのコーヒーもきっとおいしいはずなのに緊張し過ぎて味も分からない。


何から切り出そう。


「“あのね、黒猫。こないだ浩一から告白されてね♪”


………だめだ、軽すぎる。


“黒猫……こないだ浩一から告白されて…私失友したの”


は、重すぎるよ」


ブツブツ、シュミレーションしていると


「何ブツブツ独り言言ってんの?おねーさん」


カタン


カフェオレのカップを乗せた黒猫が向かい側の席に座って、私は思わずビクっ!


さっきのドーナツ屋さんの制服から学校の制服に着替えている。


「あれ??バイトは?」


「んー、早くあがっていいって。


あの女のマネージャー普段は怖いけど、朝都が知り合いだって知ったら気を遣ってくれたみたい」


「そ、そう!良かった」


変な風に声が引っくり返った。変な緊張を隠すため私はわざと話題を変えてみる。


「か、カフェオレだけ?ドーナツは?」


「俺、朝食わない派。食ったら眠くなる」


食べたら眠くなるとか…ホント仔猫。


「朝はちゃんと食べなきゃダメ。ほら、口開けて」


私はドーナツを一口サイズにちぎると黒猫の前にかざした。


黒猫は大人しくパカっと口を開ける。


ホント…ネコ…


私…飼い猫に餌付けしにきたんじゃないわよ。


そのときだった。





「あ、あそこの席開いてるよ」





高校生ぐらいの女の子の声を聞いて、反射的に私はそちらを向いた。


だってお客はサラリーマン風の男の人ばかりで、その声が特に耳についたから。





温かいドリンクのカップとドーナツが乗ったトレーを持って、私たちの隣の席へ移動してきた子は


これまた目を見張るような





美少女だった。