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結局、黒猫はジンジャーエールを一杯だけ飲んで帰ることになった。
駅までの道。
「ねぇ、トラネコくんとカリンちゃんとは生まれたときからの付き合い?な、長いね」
と隣を歩く黒猫を見上げて聞いてみた。
「いや、生まれたときは違う。お互いどこの階に誰が住んでるかなんて知らないし。
あいつらとは公園デビューで知り合ったの」
と黒猫。
こ、公園デビューとな…
黒猫、真顔で面白いな。
「亮太はまぁ人懐っこいから誰でもすぐ仲良くなれるから、歳が一緒の俺ともすぐに仲良くなって、
果凛は…どうだったかな?」
黒猫はちょっと首を捻って考えている。
だけどすぐに
「あ、そだ。果凛のおばちゃんが優しくてきれーで。手作りのおやつなんか持って来てて。
“倭人ちゃん、うちの果凛とも仲良くしてね”って。
今思えばあれが初恋だったのか…果凛のおばちゃんか…」
黒猫はまたも考えるように首を傾け、
初恋…
黒猫……おねーさま好きのルーツはそこか。
てかそんなちっちゃいときからおねーさま狙いなんて、末恐ろしい子ね。
「昔の話ダヨ。果凛のおばちゃんは今でもきれーだけど」
黒猫はちょっとだけ顔を赤くして私の手をきゅっと引き寄せる。
ふいうちに引き寄せられて顔を赤くしながら思わず黒猫を見上げると、
黒猫は口の端でにやり。
「てかさー、果凛の話ばっかり。もしかしてヤキモチっすか?」



