さっきまでご機嫌に私に話をしれてくれていたのに、今は不機嫌。
どうしたんだろ…
やっぱネコだからか?気分屋さん??
「あ、あはは…わりーわりー」
男の子たちはトラネコくんの不機嫌に苦笑い。
「それじゃ俺たち向こう行くから…」と男の子たちはそそくさと違う席へ移動していった。
変なの。
さっきは女子たちの前で冗談で私のこと「彼女」だって言ったのに…
まぁある意味黒猫より分かりやすいのか?
あいつ怒ってるのか楽しんでるのかまったく分からないし。
何か癇に障ったんだろうな…
「ごめんね…アサちゃん」
トラネコくんはちょっと申し訳なさそうに私に謝ってきて、私は慌てて手を振った。
「…ううん。カップルだってネ。何を勘違いしてるんだろうねー」
さりげなく言ったつもりなのに、
「ホント…倭人と果凛とはなんもないっつうのに」
トラネコくんがちょっと視線を逸らして面白く無さそうにカフェオレに口を付ける。
私はコーヒーのカップを両手で持ったまま、思わずトラネコくんを見た。
「私とトラネコくんのこと言ったんだけど…」
私の言葉にトラネコくんはきょとん。
「…へ?ああ、俺てっきりあいつらかと…」
「私も主語が抜けてたね。ごめん」
「………」
さっきまで途切れることなく会話していたのに、トラネコくんは今必死になって話題を探しているようにキョトキョト。
奇妙な沈黙が下りて来て、
「そ、その髪おしゃれ!だね。いつもそうしてるの?」
今度は私は話題を変えるようにわざと明るく言った。
「あー、これねぇ。果凛が俺の髪で遊ぶの好きなんだ。なんか美容師になるのが夢みたいで」
へぇ…美容師…そう言えばカリンちゃんの髪もいつも可愛く結ってある。
「倭人がやらせてくれないから、あいつ俺にくるの。
一回編み込みさせてやったら果凛が気に入ったみたいで。
『亮ちゃんそれすっごく似合う♪』って言われたから」
「…………」
今度は私の方が沈黙。
『わかんねぇ』
さっきのトラネコくんの言葉を思い出して、
え―――……
もしかして
「トラネコくんはカリンちゃんのこと好きなの―――」



