「いいよ。最初から怒ってないし。
てか、さっきも思ったケド倭人は女子に不人気?
モテそうな顔してるのに」
「顔はねー。でもあいつすっげぇ無愛想だから。良く言ったらクールての??」
あー…まぁそれは分かる気がするけど…
可愛げないネコ。
「例えばさー、
『財津くん、今日、放課後あいてない?カラオケでも行こうよ』って倭人に気がある女子がさりげなく声を掛けても
『行かない。面倒だし』
って一言」
黒猫……
それは…ちょっと……
でも普段の黒猫を知ってるからなんとなく想像できちゃったり。
「もっとこう、言い方とかあるだろ?『今日はちょっと』とかさぁ。
あいつ女子の好意にも気付いてないし、男女問わずハッキリ物を言うヤツだから
“怖い”とか“冷たい”って印象受けてんじゃね?
野郎は慣れてるし最初はとっつきにくいけど、付き合ったらそうでもないし?」
はー…なるほどぉ。
まぁ確かに彼女の私にもハッキリ言うしね。
『おっさん』だとか
『おっさん』だとか『おっさん』だとか…
おっさん、ばっかかよ!
「あいつはさー。
人一倍テリトリー意識が強いってのかな。
あいつの間合いに入れるヤツってほんとは誰も居ないんじゃないか、って思うことがある」
トラネコくんはいつもの人懐っこい笑顔を拭い去り、無表情で遠くを眺めて自分の心臓の辺りにそっと手を置く。
「あいつさ―――…
心を―――
心の内を―――……
一番近くに居る俺らにも見せてくれないな、ってトキドキふとした瞬間思うことがあるんだ。
ガキの頃から一緒に居て、そんなこと思うの寂しいけど、でもトキドキ気付かされる。
でもその間合いに入れるのがアサちゃん。
あいつが心から気を許して、何でも話せるのがアサちゃんなんだよ。
アサちゃんの素直過ぎる気持ちが―――あいつを楽にしてる気がする」



