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大学から少し離れた場所にある居酒屋のカウンターで私と溝口さん、そして涼子は三人並んでビールを傾けていた。
「はー…浩一…とうとう言ったかぁ」
ジョッキビールに口を付けながら涼子は遠い目。
でもすぐに遠くへやっていた視線を私に戻すと、
「あいつって体でかいくせにビビりだからさ~、朝都に彼氏ができて略奪愛(?)までしようとか根性ないと思ってたけど」
と、カラカラと他人事のように笑った。
「「略奪愛って…」」
私と溝口さんは声を揃えて涼子の方を見る。
「んー…ビビりとかじゃないかな。勝敗があやふやな勝負には挑まないヤツっての?
あー見えて結構慎重派だし」
と涼子が言い直して、タコわさ(たこわさび)を口に入れる。
「あ、おいしい。溝口さんもどーぞ♪」とタコわさの小鉢を隣に座った溝口さんに勧めて、
「まぁそれは恋愛においては俺もそうゆう気持ち分かります。
いくらタイプでも気がなさそうな女子は考えますもん。
だから涼子さんに告ったとき、俺は決死の覚悟だったんです」
溝口さんはさらりと言ってタコわさを一口。
「ヤだぁ、溝口さんたら♪」
涼子が赤くなって溝口さんの肩を叩く。
ラブラブなこって。私は失友したってのに。
ついでに私の彼氏は居残りで、そのあと強制的におうちに帰されて会えない状況だってのに。
それに溝口さんも、決死の覚悟ってね―――フられたぐらいで人は死にゃしませんよ。
多少大学に来辛いだけだ。
何を大げさな。とビール片手にやさぐれていると、
「あ。ホントだ。このタコわさうまい♪朝都さんもどーぞ」
とタコわさが私まで回ってきた。
話しが浩一のことよりもタコわさ評論会になってるわよ?
「溝口さんの言う通り、気にしないほうがいいわよ?だってしょうがないじゃん。
あんたは黒猫くんのことが大好きで付き合ってるわけだし。
今は顔を合わせ辛いかもしれないけど、時がきたらまた普段通りできるって」
涼子の言葉に頷きながら私もタコわさを一口、口に入れた。
それはピリリとわさびの辛さが利いていて、
その辛さが鼻の奥を刺激する。
つん、とした辛さが脳天まで駆け抜けて、私の目に再び涙が浮かんだ。



